完全焙煎珈琲豆専門店チモトコーヒー
JCQA認定コーヒーインストラクター1級の新田和雄です。
コーヒーの好みは人によって違うのでこれが絶対という淹れ方はありません。ただ、どういう点を意識して淹れると同じように淹れられるか、そして何処を変えると、どういう味の変化の傾向があるかを知る事は大切です。
素材のコーヒー豆に関しては、煎りムラがなく、芯まで綺麗に焙煎してあり、新鮮で挽きたてのものを使用するという前提で進めております。
※今回は、当店の豆の中でもバランスの取れた味わいのブレンドということで、マイルドブレンド を使用。
抽出時にどの辺りを意識するべきかの詳細は別の機会においておいて、今回は、ちょっと多目のコーヒーの粉を利用して、濃い目だけど苦くないコーヒーができないかという目的で抽出してみました。
基本方針として、粉を多めに使用し、挽き具合を粗めに使用するということで進めていきます。
まず、2杯分抽出すると言う前提ですが、通常18g使うところ、1.5倍の24gを使用します。
さらに同条件で抽出すると単純に濃いだけのコーヒーになるので、挽き具合を粗めにします。
通常は、マルケニッヒのミルで#7(うちではグラニュー糖の大きさを目安にしています。)で挽いているところ、最大の粗さの#13で挽く事にします。
あと、変更項目として、蒸らし時間の変更が考えられます。
一般にはあまり知られてませんが、とても大切な知識として、コーヒーの抽出された味の成分には大きく分類すると、酸味と苦味があり、酸味はすぐに出ますが、苦味は粒子が大きいため、しっかりとお湯と接していないと出てこないという事があります。
当店の考え方として、蒸らしの時間というのはこの酸味と苦味のバランスを取る時間だと考えています。
そこで、粒子を粗くした分、テスト的に蒸らし時間を通常25秒程度の所、長めに1分にしてみました。
これはお湯を注いで、蒸らしている状態です。1分も待つと味が出すぎなような気もしますが、粗挽きにしている分、長く待ちます。膨らんだ表面が、へこんだりもしますが、気にしません。
注ぐ時の湯面の高さを意識する事は、何気に重要です。
今回は、通常なら3杯分の粉を使用していますが、2杯分の時の高さで止めています。
抽出後はこんな感じになりました。通常より湯面が低い分、壁側の粉の層が分厚く一部崩れていますが、端には注がずに注いでいるのが分かればいいかと思います。
抽出後のサーバーの様子です。撮影したりしていたので、2杯より少し出てしまっています。
カップに注ぐとこんな感じです。明かりの具合でやや濃く見えますが、実際は湯面付近はカップが透けてる程度が飲みやすいかと思います。(あくまで好みですが。)
#13での抽出後の味を踏まえ、#10と#12でもテスト的に抽出してみました。うちのマルケニッヒのミルは、フラットカッターですので、やや微粉が出やすいと思います。
で、結果はどうでしょうか?
①【粉24g 蒸らし1分 挽き具合#13】
程よい酸味、ただし苦味はそれほど出ておらず、飲み易いが、むしろ抽出不足な印象を感じる。
②【粉24g 蒸らし1分 挽き具合#12】
酸味より苦味よりの抽出。個人的にはもう少し軽い味わいが好み。
③【粉24g 蒸らし1分 挽き具合#10】
抽出液が濃すぎる印象。苦味がきつく普通に飲むには辛いレベル。ミルクで割るといいかもといった印象。
といった感じでした。
あくまで、ミルで挽いた粒度が一定で変化していると考えた場合ですが、今回の抽出で一番意外に思ったことは、挽き具合からの抽出液へ、単純に比例ではなく、2乗や3乗に影響を受ける印象だったと言う点があります。(表面積を考えると3乗でいいのかもしれません。)これまでは、粉の粒度の影響具合がそこまで大きくなるとは思っていなかったので勉強になりました。
今回の目的の「濃い目だけど苦くないコーヒーを作る」には、①②の間がいいかなという感想です。
蒸らし時間での影響も見たかったので、②の蒸らし時間を短め(20秒程度)にして再度テスト!
個人的には、やや酸味を感じますが飲みやすい。人によっては「薄い」という感じになりました。(ここでは、蒸らし時間により味や濃さに影響が出ることが確認できました。)という感じで、今回の実験は終りたいと思います。
答えが出てないようですが、味に関しては好みの問題なので、正解はありません。それよりは、どの要因をどう変更すると、味にどう影響があるかを理解していく事が大切なんです。
機械を使って検査しているわけではないのであくまで個人の感想の範疇を越えませんが、コーヒーのおいしい淹れ方に一歩でも近づけるように今後も色々と試してみたいと思います。